四季本本

ほとんどは感想、たまに書評らしくなります。

シャーロック・ホームズの短編を読みながら英文法を学ぶ本です。

シャーロック・ホームズで学ぶ英文法」 柴田元幸西村義樹森田修

 

著者の一人である西村さんは筋金入りのシャーロキアンだという。それほどではないが、私もシャーロキアンなので、この本はぜひ読みたいと思っていた。

コナン・ドイルの「青いザクロ石の冒険(青い紅玉というタイトル訳もある)」を読みながら英文法を学ぼうという本である。簡単にあらすじを記すと、いつものようにホームズは安楽椅子に座ってパイプをふかしている。そこに、ワトソンが訪ねてくる。

そして、ホームズはある出来事を話す。ピータースンという退役軍人がけんかの仲裁をしてある男を助けた。ピータースンはその男が残していったガチョウと帽子をホームズの所に持ってきた。そして、おなじみのホームズの推理が始まる。ボロボロのフェルト帽を見て、ホームズは帽子の持ち主は非常に知的で過去3年間は暮らし向きが良かったが、現在はうまくいっておらず、妻がその男を愛さなくなった、などと推理を述べる。

この辺りを読んで、この短編を読んだことがあるのを思い出した。子どもの頃にシャーロック・ホームズは全部読んでいるはずなので、当然ではあるが。

誰かが書いていたように、帽子が非常に大きいからといってその人物は頭が良いと推理するのはちょっとこじつけに過ぎるとは思う。しかし、子どもの頃はこのような推理を楽しんで読んでいたことも事実である。

そしてピータースンはそのガチョウを食べようとしてガチョウの体内から青いザクロ石を見つけた。ホームズはそれがモーカー伯爵夫人のもので、1000ポンドの価値があると言う。盗んだとされたホーナーという男は逮捕されたのだが、宝石はどこにも見つからなかった。ホーナーはその後無罪となった。ではなぜ、ピータースンの手に入ったのか。ホームズが的確な対応をし、鮮やかな推理で事件は収束する。

英文を読みながら、「なぜ比較級が使われているのでしょうか?」「この文の文型はなんでしょうか?」「この文の主動詞はなんでしょうか?」といった問題に答え、解説を読むわけだが、難しくて分からない問題もある。さすがに、ベテランの翻訳家、柴田元幸さんや認知言語学者の西村さんが的確な解説をしてくれていて、その説明は腑に落ちる。文法的な解説を読みながら、シャーロック・ホームズの作品をじっくりと英語で楽しめる本になっている。